2025/08/04

(NO.1747) 血管年齢は45歳でピークになる    岡 希太郎

健康な体力を死ぬまで維持したいと思ったら「血管年齢」が大事だと、最初に唱えたのは東医大心臓外科の高沢謙二先生で、その中身は2002年の著書(血管年齢は若返る;講談社)に詳しい。臨床経験から得られた先生の考えは、「血管年齢は実年齢に比例して増える」のだが、「増え切らないうちに生活習慣を改善すれば若返る」というものだった。この説はつい最近まで社会に認められて、多くの類書(読んでも余り役立たない)が出版されている。

ところが、この六月に状況が一変した。ヒトの臓器を作っている全タンパク質を臓器別に解析したら、驚きのデータが出て来たのだ。「臓器の年齢は臓器ごとに違っていて、最も早く老化する臓器は動脈である」。解析内容が複雑で難しいので、ネットのブログやHPにはまだ出ていないが、健康な体力を維持するために、非常に示唆に富んだデータと言える。

 動脈の老化は35歳で始まって45歳でほぼ終る。

② この10年間の変化は、一生の変化の4分の3に相当する。

③ 動脈の老化が他の臓器の老化を誘発する。

④ 全身の老化が変曲点(以後は余り変化しない)に達するのは50歳である。

この論文を読んで解ったことがある。織田信長が出陣前に舞い謳ったという「人間僅か50年・・・」とは、血管年齢が50歳に達すると人は死を迎えるのである。動脈の老化は早いから、老化が他人より早く進む人は50歳になる前に亡くなってしまうのだ。しかも、変化が急なので死亡原因は急性で手の打ちようがなかったのだ。

信長の時代の人生50年は昭和20年頃まで続いていた。時代が変わっても動脈年齢に変化はなかったからだ。ところが、昭和20年を過ぎると医薬開発の急展開がペニシリンから始まって、間もなく降圧薬や抗糖尿病薬も日本では保険適用されて、安上がりに命を長らえる時代になった。そして今や「百寿時代」と嘯いているのである。

呆けた百寿は要らないから、早くなんとかして欲しい。この論文はその第一歩に違いない!

 

2025年8月4日  岡 希太郎