2025/11/12

(NO.1782) ぼくたちの「水俣」に出会う②    小山伸二

1月1日・2日、日本スローフード協会の主催イベント「テッラマードレ・ジャパン 2025 in 水俣」に参加してきました。 

https://www.terramadrejapan.com/

この数年にわたって、ぼくは「水俣」に接近していった。 

東京学芸大学の環境学の原子栄一郎さんとの出会い。

そして、再読した石牟礼道子さんの水俣。

 

かつて書肆梓で編集を担当した雑誌「コロニア」(Nr.12017Nr.22018)に掲載された石牟礼道子さんをめぐる臼井隆一郎さんの2本の原稿「東京丸の内の過越 ―月下の幻影―」「宇宙世紀 はじまる」。これは2014年に出版された臼井さんの『「苦海浄土」論』のつづきのような、石牟礼道子さんの水俣と世界の深層に眠る母型生社会をつなぐ壮大な論考の続編とも呼べる原稿だった。

 

おなじ「コロニア」のNr.123(2019)で連載された元NHKのディレクターだった松岡洋之助さんの連載「<老いのたわ言>その①②③」の3本の原稿も、テレビ局の記者として「水俣闘争」とかかわった松岡さん自身の個人史であり、メディア史だった。

この松岡さんに、水俣に行くならぜひとも相思社へ、と教えていただいた。

 

そして2021年に公開された映画「MINAMATA」(主演ジョニー・デップ、音楽坂本龍一)をあらためてネットで視聴。さらに、この映画に導かれて出会った石井妙子の『魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣』。

 

水俣に出会うための、この7、8年の出会いが、ぼくを「テッラマードレ・ジャパン 2025 in 水俣」に連れていってくれたんだ。

 

そして、また、新しい出会いが。

水俣市の隣町の「津奈木町」。

いまだに旧チッソの城下町的な水俣市内では、公共空間には、いっさい石牟礼道子さんもユージン・スミスもまるで存在しないのだが、水俣市との合併を選ばなかった津奈木町には、町立の美術館に、石牟さんの言葉が、そしてユージン・スミスが世界に伝えた『MINAMATA』の写真集もちゃんと展示してあった。

おなじ不知火海に面し、とてつもない不幸を共有するこの町で、未来にむけて公共空間のなかに、ぼくたちにとって大切な「記憶」を守ってくれている場所がある。そのことに出会えたのが、今回のなによりの収穫でもありました。

 

202511月11日  小山伸二