2020/03/18

アラビカ種の生い立ち

アラビカ種はエチオピアの南西部でユーゲノイデス種とカネフォラ(ロブスタ)種の交配によって生まれました。この2種類の遺伝子の異質倍数化(異なる親種の遺伝子を 1 つの核内に同時に持つ事)によって奇跡的にアラビカ種が誕生したことが解明されたのは20年前の事です。それまでアラビカ種の誕生は今から10万~60万年前とされてきましたが遺伝子の解明によって1万~2万年前に交配が行われた事がわかりました。またこの交配(異質倍数化)は1度だけしか行われておらずその際に出来た特殊個体が現在のアラビカ種の起源となっています。この奇跡的な交配が起こった理由として2つ条件が挙げられます。

①同じ場所にユーゲノイデス種とカネフォラ(ロブスタ)種が存在していた事

②気候変動による気温上昇でそれぞれの配偶子が温度変化によって交配した事

こうして交わる事のない種が交配し特殊個体が誕生しました。通常新しい個体は非常に不安定で弱いのですが、非常に稀なことではありますが、これまで生き延びる事の出来た最大の理由は親であるそれぞれ親種は他家受粉なのに対し、特殊個体は自家受粉に変わったからです。それぞれの種の自家不和合性(同じ花(株)の花粉が柱頭についても、花粉管の受精が妨げられる仕組)が何らかの理由で解除された事が挙げられます。その特殊個体から現在736種類のアラビカ種が栽培または野山に自生しています。この特殊個体、アラビカ種は大別すると3つのグループに分けられます。

①イエメン・ハラー:14世紀にイエメンに伝わりそこで太陽光の下でもシッカリ育つ品種になりそこからティピカ、ブルボンが生まれ世界各地へと分布しました。

②ジンマ・ボンガ:エチオピアで栽培されている品種

③シェカ:エチオピアの森林に自生するほとんど知られていない野生のアラビカ種。

アラビカ種はもともとエチオピアの高地の森林で育ちました。熱により配偶子が変化したからでも分かるように遺伝子上、熱や光に弱く太陽光等を避けて来ました。これが現在コーヒー栽培においてシェードツリーが必要な主な理由です。

たった1度の奇跡的な交配によって生まれた特殊個体、アラビカ種が現在何百種類、何百万本というコーヒーを生み出しているのです。

ご清聴、有難うございます。