2024/03/04

(NO.1588) 絶食の健康効果   岡 希太郎

絶食と断食について得するお話です。どちらも食べものを食べないという意味では同じですが、ちょっと違いがあります。

絶食とは「健康診断の前の晩は8時を過ぎたら絶食です」というように、何かに強制されて食べられなくなること。断食は「今日は健康のために1食にします」というように、自ら進んで食べないことです。 

古くはヒポクラテスが「断食は身体に良い」と言い残しましたし、イスラム教徒はラマダーンに日の出から日没まで一切の飲食を絶つことで、飢えを凌ぐ人々との連帯感を強めるという宗教の目的があるようです。 

動物実験では、サルを餌不足の状態で飼育すると長生きするという結果が出ていて、摂食の健康効果の証拠になっています。ところがヒト社会では、サル実験とは逆で、食べ過ぎが糖尿病リスクを高めたり、全死亡リスクをも高めることが分かっていますし、糖尿病治療薬メトホルミンが寿命を延ばすことも専門家の注目の的です。

では断食がどうして寿命を延ばすのか、その理由については、長い間の議論の果てに、今年はじめてまともな答えが出てきました。断食が「エネルギーの元である補酵素NADを増やすから」という種明かしのような論文が発表されたのです。

今世紀の始め「赤ワインが寿命を延ばす」という衝撃ニュースが世界を駆け巡りました。しかし不思議なことに「NAD」との関係を指摘して証明した人は居ませんでした。にも拘らず、証拠もないのに高額サプリのNMNが世に出てきました。「何が何でも長生きしたいお金持ち」が多いからでしょう。

ここで思い出してください。「毎日飲んでいればそれだけで寿命が延びる世界に唯一の飲み物・・・それはコーヒー」ということが、疫学観察研究ではありますが、確かに証明されているのです。

空腹を感じたらコーヒーを飲む・・・それこそが断食に勝る健康長寿の秘訣なのです。

 

 

2024年3月4日  岡 希太郎