2026/04/22

(NO.1827) 雨の中で素敵に踊ること 小山伸二

またも、このコーナーのコラム、長らくの留守だった。

もう4月も終わろうとしているいま、今年はじめのコラムになる。

 

さて、今年も4月から、辻調理師専門学校というプロの料理人を育成する学校で、「食文化産業概論」という授業を担当しているのだが、そんな授業の中で出会ったフレーズをここで紹介したい。

食の産業を、音楽や映画などのエンターテイメント産業のように、「文化産業」と捉えることで、これからの食の世界をどう考えていくのか、そんなことを学生さんたちに問いかけている授業になっている。

今年は、この授業のなかで3つあげているキーワードにひとつとして、レジリエンス(回復力)をあげている(あと二つは、サステナブルのその先にあるリジェネラティブ=再生と、個々人に寄り添うパーソナライズだ)。

レジリエンスは、たとえば、繰り返される自然災害時に避難所への炊き出しなどに、料理人が参加することも含めて、平時から地域社会のなかでどういうふうに災害時のためのレジリエンスを持ったバックアップの食糧対策をするのか、という考え方だ。

この食におけるレジリエンスを考えるときに、ふと出会ったフレーズが、これだ。

そのフレーズとは、「人生とは、嵐が過ぎ去るのを待つことではない。雨の中でどう踊るかを学ぶことだ(Life isn't about waiting for the storm to pass... It's about learning to dance in the rain.)」 だ。

これは、1970年代から90年代にかけて活動していたアメリカのヴィヴィアン・グリーンの文章。グリーンは、自己啓発セミナーのようなものを行っていたようだが、詳細はあまりわからない。

ただ、彼女の言葉として、アメリカでは広く知られたようだ。これは、深い悲しみや喪失感をどう受け止めるのかということへの、アンサーになっている。

それは、現代においても、ひとびとの心にせまる名言となっているのだろう。

「嵐」としての繰り返される自然災害や戦乱の中、ただじっと嵐が過ぎ去るのを何もせず待つのではなく、むしろ、いつ災害がやって来てもおかしくないという態度で、より積極的に雨の中でいかに素敵に踊ることができるのか。

そんなふうに、平時から災害時などの非常事態の中、いろいろ制約があっても、素敵な食事を用意できるように食材の準備や、設備面の不具合をリカバリーできる調理方法の確立など、やることはたくさんあるのではないだろうか。

そういう、前向きな提言であり、専門的な職業人のプライドをくすぐるフレーズとしても、使える文章だと、教室の中で、学生たちに話ながら、あらためて気づいたのでした。

どんなにひどい嵐がやって来ても、その雨の中で、どう素敵に踊れるか、それがこんな大変な時代を生き抜く叡智なのかもしれない、と思う今日この頃だ。

 

2026/4/22    小山伸二