2026/03/05

(NO.1813) ナポレオンという処方箋  デコッパチ

動画サイトなどにはまり、どうも落ち着かない。こういうときは、中編、長編小説にたちかえり、処方箋として、本を読むのが、身体にいいような気がする。とりあえず、SNSなどから、いっさい離れて、25年くらいぶりに「戦争と平和」を2週間ほどかけて読んでみた。とある好きな作家は、定点観測として、例えば、楡家の人々、風と共に去りぬ、指輪物語などを数年ごとによむそうだ。それをやや模倣したわけだが、なかなか幸せな時間であった。

これはトルストイが1860年代に書いたもので、ナポレオン戦争の前後に生きた人々を描いた壮大な叙事詩。難解な箇所も多いが、そのあたりは、来月あたりにもう一度読むときに改めて消化できれば、、、。 

150年以上前の物語でありながら、今なお響く。トルストイは歴史を動かしているのはナポレオンやアレクサンドル1世といった「英雄」ではなく、名もなき無数の兵士や、領地や首都で暮らす貴族、農民たちの「意志の総和」であると説く。華やかな舞踏会での恋、戦場での生活、そして家族の絆。大きな出来事の裏側にあるディテールを丹念に描き出す。 

ピエールやアンドレイ、ナターシャといった登場人物たちを軸に数百人の人物(皇帝、外交官、軍人、貴族、農民、商人、民兵など)がでてくる。作中、負傷して倒れた公爵アンドレイが、アウステルリッツの空を見上げる有名なシーンがある。それまで名誉を追い求めていた彼が、無限に広がる高い空を前にして、生命の尊厳に気づく瞬間である。

しかし、若い頃とは違い、今回、わたしは、ピエールやナターシャの親の世代の言動や、浅はかな思惑や、身体の動かなさ(会議で人の話を聞きながら眠る老軍人、感情がふれがちな親たち、など)、などに、以前よりも関心、共感が行ってしまう。定点観測として、自分がもう2030年前とは明らかに違うということだけはなんとかわかった。ちなみに、同題名のハリウッド映画もいいですが、原作は、そのおよそ100倍以上の価値があるのではないかと思う。

 

 

2026年3月3日 デコッパチ