電車の中で女学生が文庫本を読んでいたりすると、
訳もなく嬉しくなってしまうものだ。
書物というものは、読むべき年齢に読まないと意味がない。
食した果実の甘味や酸味に新鮮な驚きを感じるのは、
若い時だけに限られている。
取引先の会社の新入社員が挨拶に来た時に
「どんな本を読みましたか」と訊いたことがあった。
その新入社員はためらうこともなく、
「少年ジャンプです」と答えた。
会話はそこで終った。
ある商社の部長と酒を酌み交わしていた時のことである。
日露戦争が酒の肴の話題になったので『坂の上の雲』の小説のことを話したら、
「何ですか、その雲というのは・・」と部長が訊き返してきた。
会話はそこで途切れた。
大手商社の部長の役職に就いている男だが、
司馬遼太郎の著書は一冊も読んだことがないという。
一冊もである。
その部長が率いる部門は、
何年も赤字が続いて廃部の危機に陥っている。
当然だろう。
26/睦月/2026 山田 雄正