携帯電話の普及によって、不倫するカップルが激増したと言われている。
どんな場所に居ても、相手と連絡が取れる便利さは好都合に違いない。
それは都はるみの『北の宿から』がヒットした昭和50年のことである。
不倫をしている関係で女が辛いのは大晦日の夜だという。
男は家族と紅白歌合戦を観ながらくつろぐことが出来ても、
女は寂しい夜を独りで過ごさねばならない。
そんな大晦日の夜に「あなた死んでもいいですか・・」と、
こんな歌を聴いたらドキッとしない男はいないだろう。
タバコを買いに行く振りをして、慌てて公衆電話から
アパートで一人でいる彼女に「大丈夫か?」と気遣ういじましい話があるが、
携帯電話の普及よって、要らぬ心配もせずに不倫が楽に行われる時代になった。
不義密通は獄門はりつけの命がけの時代からすると、
現代の不倫には罪悪感や後ろめたさはまるで感じられない。
これは日本の女性が肉体も思考も欧米型に向かっている表れなのだろう。
女はたくましくなったが、逆に男は弱々しくそして女々しくなった。
別れ話で捨てられているのは男の方が圧倒的に多く、
すんなりと別れることは出来ないようだ。
『振られて熱くなる火事場の纏(まとい)』
一時の悦楽事として割り切って別れるのは大人の男としての不倫の倫理なのだが、
脅したりストーカーとして執拗に付きまとったりするのは女々しい限りである。
「あなた死んでもいいですか・・」
この歌詞は女ではなく、むしろ男の台詞のような歌になったかもしれない。
22/師走/2025 山田 雄正