急に寒くなって熱いコーヒーが恋しくなってきました。熱いコーヒーといえば、寒い北国では格別なお持て成しになるでしょう。今に始まったことではありません。江戸時代の記録によれば、北海道で最初にコーヒーを飲んだ人は、明治維新の13年前、1855年に宗谷岬でした。その冬、ロシア海軍の警備に当たった津軽藩士に配給されたそうです。
その2年後の記録によれば、紋別で同じ警備に当たっていた東北藩士が飲んでいたそうです。どちらも幕府が支給したコーヒーを飲むことで、浮腫病(現在のビタミン欠乏症)で死ぬことなく、全員が無事に故郷へ帰ることが出来たのでした。
でもその50年前に遡ると、流氷で厳しい斜里の冬に、100人の津軽藩士のうち、実に72人が浮腫病で帰らぬ人となったのです。浮腫病の死亡率、それはもうただ事ではありませんでした。この話を、津軽の弘前で珈琲店を経営しながら、宗谷岬に珈琲豆の碑を建てた店主さんに話したところ、「宗谷岬から紋別を通って斜里へ旅すれば、珈琲物語はもっともっと熱くなる」と話してくれました。本当にそうだなと感銘した次第です。
筆者は宗谷へも斜里へも行ったことがありますが、紋別にはまだ行ったことがありません。
2025年11月3日 岡 希太郎