コーヒーノキが誕生し、現在も原木が見つかる地域には、アフリカ独特の雨季と乾季があるそうです。コーヒーノキが好む傾斜地や火山灰地は水はけがよく適度な湿度を好む最適地とされています。それでも長い乾季を生き抜いて赤い実を実らせるには何か特別な工夫があるはずと思うのです。
トリゴネリン!これを豊富に含む植物はコーヒーノキの他にはフェヌグリークしかありません。そんな珍しい成分がコーヒーに入っている意味は何なのでしょうか?今日はそれを考えます。当たっていたらお慰み。
2021年のこと、理化学研究所環境資源研究センターの研究チームが国際誌に論文を発表しました。その研究の目的は、地球環境が変化して温暖化し、農産地の気候が乾季優先になったら、「野菜や果実の生育をどうすれば守れるか?」。答えは非常にシンプルで、「肥料にナイアシン(ニコチン酸)を加える!」それだけなのです。そうすると普通なら枯れてしまうシロイヌナズナが、緑色の葉を沢山つけて普通に育つことが分かったのです。
コーヒーノキにナイアシンは微量ですが、その代わりにトリゴネリンを豊富に含んでいます。コーヒーノキが結実するときは大量のエネルギーが必要で、そのためエネルギー分子NADをたくさん合成しなければなりません。そこでトリゴネリンがナイアシンに変化して、そのナイアシンからNADが出来るのです。ここまではよく知られた植物科学です。ですからコーヒーノキは乾季に水分が不足しても、ナイアシンを自分で作って乾季に実を着けることが出来るのではないでしょうか?
おうちで育てているコーヒーノキには、もしかしたらトリゴネリンが不足しているかも知れません。肥料にナイアシンを加えてみましょう・・・そうすれば今よりずっと多くの実が成るかも知れませんよ!
2025年6月2日 岡 希太郎