福島の古い寺の墓地に樹齢500年と言われる巨樹の山桜が在って、
地元の人からは御神木として崇められている。
幹の太さとその堂々とした樹形には「おお、これは凄い」と、
感嘆の声を発する人が多い。
満開になれば華やかで艶やかな薄桃色に染まる空になったが、
この数年、樹力が衰えて花の数が目に見えて減ってきた。
樹木医の診断によれば肥料不足が原因だという。
昔は人が亡くなると土葬で埋葬することが殆んどで、
地中で腐敗した遺体が肥料となってこの山桜を大きく育てた。
だが現代は火葬して骨壺に入れて埋葬する時代である。
これにより巨樹の山桜は肥料不足に陥り、
このまま放置していれば枯れるだろうと言われている。
死んで腐った人間を肥料にしてきた桜というのは異様で気味の悪い話だが、
それでも巨樹の山桜が枯れるのは誰もが望むものではない。
その肥料ならどうにでもなるだろう。
詐欺やペテンで年寄りを騙したりする腐った人間ならいくらでもいる。
巨樹の山桜に施す肥料としては、最も適した肥やしになるに違いない。
07/卯月/2025 山田 雄正