駅裏の居酒屋で夕暮れからご機嫌になっている隠居族だが、
それでも店が混み合ってきたらサッと席を立って帰って行く。
至福の一時を堪能したらそれで十分。
それが常連の呑ん兵衛の流儀でもある。
「それじゃ、また明日なぁ」
「おう、転ぶなよ、骨折するぞ」
「そっちもなぁ、気を付けろよ」
出世とは無縁だったが、
そんな言葉が野暮に思える桜開花の春の宵である。
25/弥生/2024 山田 雄正