先日、あるご高名なスペシャリティーコーヒー業界の第一人者H氏と、以前私と同じ会社で仕事をし、今ではコーヒー業界の重鎮になろうかという友人K氏と、三人でワイン会を行った時の話である。
元々ワイン愛好家でおられるH氏の方から、私が数年前にワインの資格を取得し、それ以降ワインにはまっていることから、今回特別にお声をおかけいただいたお陰で、ブルゴーニュの大変珍しい、通常では滅多に口にすることができない古酒をテイスティングし、大変有意義な時間を過ごすことができた。、
その間、もちろんコーヒー業界、ブルゴーニュワインの話題など興味深い話を耳にすることができそれは楽しい時間であった。
その時のことである。
話題がコーヒーから突如日本茶の話になった。
日本茶と言えば、日本人である以上ほとんどの人が、通常何の違和感もなく口にするものであると思う。
ところが、私にとってはいささかショッキングなことを聞いてしまった。
実は私は幼少のころから家族で食事をする時は通常日本茶(我が家はいつも番茶であったが)を大きな急須に入れて熱湯を注いで、全員分を湯呑にそれぞれ注いで飲んだものである。そしてこの習慣が今でも抜けず、大学入学と共に上京してから50を過ぎた現在まで、自宅で食事をする時は必ず急須でお茶を入れて飲んでいる。
そして、それが現代の各家庭でも至極当たり前のことだと思っていた。
ところが、現代ではもはや普段使いで急須を使ってお茶を飲むことは希少になり、なによりも急須自体があまり売られていないということだった。
確かに、私も時々粗相をして急須を破損した時、急須は日本茶専門店か陶磁器屋以外では入手し辛いことは知っていたが、我々日本人が飲む日本茶がもはや (高いシェアを持つ)某ペットボトル日本茶メーカーに牛耳られてしまっているとは、世間知らずながら改めて驚きを隠せなかった。
確かにちょっとお茶を飲みたいと言うときに、ペットボトルであればわざわざお湯を沸かして、茶葉を急須に入れて飲まなくても気軽にお茶が飲めるのは良い事だし、何よりも外出先で弁当などを食べる時、それは重宝する。
コーヒーでも、コンビニではペットボトルや缶の物が売られている。
しかしこの10-20年間で、コーヒーに関してはレギュラーコーヒーを購入して、自宅でドリップして飲む愛飲家が増えてきた。それはスペシャリティーコーヒーの普及に多大にご尽力されたH氏を筆頭に、コーヒー業界に所属される方々の努力の賜物であると思う。
一方で、日本人にとって最も身近であるはずの日本茶が、もはやペットボトルでしかほとんど飲まれなくなってしまったのはなぜだろうか。いや、そんなことは無い。ちゃんと茶葉からお茶を入れているというお方もおられるとは思うが、たぶんそれは少数派であろう。
私は、一手間も二手間もあったとしても、これからも日本茶は急須に茶葉を入れて飲む習慣を続けたい。それほど日本茶にはこれからも頑張って欲しいと思う次第である。
2020年11月25日
涼村 行