米国の女性シンガー、ベット・ミドラーのベスト盤のなかにFrom a Distanceという、素敵な曲がある。
From a distance the world looks blue and green. And snow capped mountains white .
ベット・ミドラーは 多才である。シンガーにとって最高の栄誉であるグラミー賞を獲得しただけではなく、舞台や映画においても、シリアス+コメディ女優としても活躍し、ゴールデングローブ賞を幾度か獲得している。天は二物を与えるのである。また、これを書いている間にも、わたしの携帯端末の画面に、「MISHA(日本のアーチスト)が影響を受けた音楽家たち」というメッセージが浮かんでくる。ベット・ミドラー、ナット・キング・コール、マイケル・ジャクソン、マービン・ゲイ、などだそうだ。MISHAの源流はあなたがただったのですか。
「from a distance」・・・「遠くからみると」、「空からみると」、「天空から眺めると」、などが思い浮かぶが、なかなか、ぴたっとくる言葉がみつからない。from a distance。とりあえずは、この曲を聴いて、天空や地上、海洋、海流や、優雅に気流に乗る鷹、雪をかむった山々などの姿を思い描くのもいいと思います。
最近は、とりあえず、コーヒーばかり飲んでいる。お湯を沸かし、カップの上に、透明のプラスチックのドリップを置いて、紙を敷く。そして、お湯を注ぐ。三年寝太郎であるものの、この動作だけは、不思議と体が動く。何か手を動かしていないと、やりきれないということもあるかもしれない。
温かいコーヒーと、椅子と、パンがあれば、それだけで、ささやかな幸せである。わたしは、かなり単純なのである。コーヒーは、とりあえず、現状・現実からの距離感をもたらす。うまくいけば、真実の精査、将来の示唆も、運んできてくれるかもしれない。ちょっと、自分の頭の上の空間から自分を眺める、といったことも可能にしてくれるものではないかと思う。ちょっと期待しすぎかもしれないが、クールで、クラシックな、コーヒーの女神のささやきも聞こえることも、ごくまれに、あるかもしれない。
近所に、書店にカフェがくっついたところがあるが、なんとか営業を続けている。レジの横に20冊くらいの本が遠慮がちに、かつ、ベット・ミドラーのような堂々とした質感をたたえて並んでいる。自由に読めるのだが、その中に、比較的好きな作家の本があることもある。稀に、ごく小さいながらも確固たる幸せは、遠慮がちに存在する。
2020年4月27日 デコッパチ