しまった。
コラムの続きを書かないうちに11月が過ぎ去って、なんと12月も21日になっているではないか。
そう、ほろ酔い旅の日々。10月の旅のつづきの東北の話だった。
10月の東北旅は、台風と追いかけっこのスリリングな旅でした。
痛む膝、腰を抱えながら、無謀にも、岩手県早池峰の大償神楽に挑むプロジェクト、2回目の現地稽古。まったく、復習をしていないので、週一練習してきた大学生たちに、まったくついていけない。
現地では幼稚園からなる初級編の「しんがく」もおぼつかないが、まして「三番叟」など舞えるはずもなく。神楽は重力との遊戯。ぼくの場合は檜の床に足がくっついたみたいで、7拍子のリズムに乗れず。
とほほの連続。こんなにもできないと、いっそ清々しいなんて、開き直っている場合じゃないのだが。
奇数のステップを踏むのは難しい。
ほうほうの態で、権現さまに鹿児島県長島町の焼酎と、ぼくの新作の詩集『さかまく髪のライオンになって』を奉納して、才能もないくせに、練習を怠ったことを、深く詫びたしだい。
そして、とうとう台風で在来線も新幹線も止まってしまったので、花巻からレンタカーを借りて宮城県大崎市古川に、高泉淳子さんのライブを聴きに。
途中、いたるところが水没していて、怖いくらい。どこまでも水田のように水が満ち、これは古川にたどり着くだけでせいいっぱい。
ライブもきっと中止だろうな、と思いつつ、古川に到着。
昼過ぎには台風一過、青空まで見えてくる。だめもとで、会場を訪ねみると、なんと自治体主催のコンサートは中止だけど、アーティストのご好意で、わざわざ来て下さったみなさんのために無料のコンサートを、ということになっていた。
なぜ、自治体は当日になって、急に中止にしたのか。それなら、前日のうちに中止を告知したらよかったのに。優柔不断と忖度と、責任はとりたくな体質がすけて見える。
それにひきかえ、ノーギャラで、こんな大変ときだからこそ、歌が必要じゃないのかと、明るく楽しい歌を披露してくれた
自然災害はうちつづくこの列島に、いまこそ、芸能が、歌が、踊りがあっていいのではないだろうか。
ひとは、パンのみにて生きるのではない。生きるということによりそう、余剰の部分にこそ、人生があると、言いたい。そんなことを思いながら東北でほろ酔いのぼくではあった。
2019年12月23日 小山伸二