その台において、コーヒーとケーキが輝いていた。
その1週間前、急に、小学校の社会人同窓会の司会を頼まれた。10年前にも経験したが、微妙に断れない状況に追い込まれた状況下のオファーであった。一応、常任幹事という身ではあるのだが、ここ数年はあまり顔を出しておらず、皆さまにご迷惑をおかけしていたため、どうにも断れない。
しかしながら、あと1週間しかないというではないか。ついでに、前年の台本をわたされる。
「ラジオの時間」(三谷幸喜・脚本)という映画をご存知のかたもいよう。映画のなかで、脚本作家(鈴木京香)が、自分の書いた脚本がドラマの生放送になる現場に参加する。しかし、声優、俳優はたちは見事なほど、くせ者揃い。千本ノッコという女優からのわがままを皮切りに、雪崩のようにどんどん直し、設定の変更が入り、熱海を舞台としたメロドラマが、シカゴでのスペクタルドラマになっていく。話の流れに巨大な矛盾が生じ、収拾がつかなくなり、途中で脚本家が切れてしまうが、奇跡的に物語を完結させるはなしである。今回の司会は、それに似た事態になっていくのか。
前日は、いちおう、声に出して練習した。かりにも、大先輩がたがいらっしゃるのだ。「えー、これから2018年度の#@学園小学校の社会人同窓会を始めます。司会進行役は22回生デコッパチです。どうぞよろしくお願い申し上げます」から、はじまる。そして挨拶予定の会長、主賓、大学・小中高の理事の名前を暗記した。
当日は、まあ、始まってしまえば、あとは怒涛のように流れてくれた。しかし、スピーチする方の到着が遅くなったり、還暦祝いの方が急遽いらしたり、新人の先生がたの挨拶がはいるなど、いろいろとハプニングが起こるものである。その度に機転がつかない私は、うろたえるのみである。
司会の台本は、修正だらけとなり、紙面は、サッカー場のように、しっちゃかめっちゃかに。しかし、なんとか、無事に2時間が経ち、最後に校歌を歌い、司会の余計なひとことをはさみつつも終了した。
二時間のうち、スピーチが7、8割。世の会合というものは、みなこうした配分なのかしら? その後、みなさまを送り出し、わたし自身は、やっとこさ落ち着くことができた。ほとんど食べられなかったが、妙な充実感があった。ふと、台をみると、バイキングの残り物の皿の横に、なんと、数種類のケーキと、コーヒーがあるではないか! ケーキとコーヒー。コーヒーとケーキ。映画ロッキーとトレーナーのミッキー、あしたのジョーと丹下団平、テルマ&ルイーズのような、濃ゆい関係である。
今日の収穫は、かっこいい先輩がいたことだろう。5回生の方で、shall we ダンスの森山周一郎と、イタリア俳優のマルチェロ・マストロヤンニをブレンドしたようなかたがいらしたほか、還暦のゲスト先輩は相当ダンディであった。60才になることがいやでなくなった。このひとのようになれたらなぁ、と思うくらいは自由であろう。なれるかなあ、なれるかしら、ならなくては。
2019年3月1日 Decoppchi