ひっそりと生きよ。
これは紀元前の古代ギリシャの哲学者(エピクロス)の言葉である。
彼は他にも『快楽こそ善であり、人生の目的だ』と言っている。
この快楽は一般的な享楽とは異なり、心の平静を意味しているもので、
ひっそりとした平穏な暮らしこそが、人間の求める静かな快楽であると説いている。
人間の幸福感は様々だが、30年ほど前から日本人の意識に変化が生じている。
それは内面的な豊かさよりも、物質的な豊かさを求める傾向が強くなっているのだ。
プール付きの豪邸に住み、ドイツ製の高級車に乗り、
ゴルフを楽しみ、別荘を所有して、年に数回は海外旅行に行く。
物質的な豊かさとはこんな程度なものだが、
中身がスカスカな人間ほど派手な生活を求めたがる。
まるで月夜の蟹である。
ひっそりと静かに暮らす生き方の中にこそ、
濃縮な人生のエッセンスが多量に含まれているものだが、
その事実を知っている人間が少なくなっていることは確かなようだ。
先ごろ米航空宇宙局(NASA)は、
600光年先に地球に似た環境の惑星を確認したと発表した。
惑星の半径は地球の2.4倍で、290日かけて太陽に似た惑星の周りを回るという。
600光年といえば、広大な宇宙では目と鼻の距離である。
数万年後の未来には、人類はこの惑星に移り住むことを可能にするかもしれない。
「老後は地球を離れて、女房と惑星でひっそりと暮らします・・」
古代ギリシャの時代も現代も、そしてまた遥か彼方の未来の時代になっても、
静かな暮らしを求めようとする人間の精神は、永久不変であると信じたい。
20/睦月/2012年 山田 雄正