2010/09/03

人も十色なら木も十色

三遊亭円生師匠が落語の枕によくこんな噺をしていた。

「杉は直ぐ、松はゆがみて面白し、人の心も奇異なり、十人よれば気は十色なぞと申しまして・・」

いわゆる人間にも樹木にも、それぞれ個性、特性があるという意味である。

その木材だが、実に様々箇所に使われている。
柱用、土台用、梁材、内装材、フローリング、家具、梱包、土木材など、
果ては炭、箸、楊枝の類まで、その用途は特性に応じて多種多様である。

また木材の中には、曲がり、ねじれ、反りなどの性質(くせ)の強い材もあるが、
腕の良い大工にかかれば、その性質をむしろ長所として引き出し難なく活用してしまう。

昔の宮大工は、その木材の特性を活かすべく、使用する丸太の一本一本に印を付け、
どの山の、どの場所に自生していた樹木なのか記録していた。

そして、その丸太を建築材として用いる時には、北側に自生していた木は北側の場所に、
南側に自生していた木は南側の場所に使用したそうだ。

それが自然であり、歪みや収縮、ねじれや曲がりを最小限にする効果があったと思われる。

プレカットや工業製品の台頭によって、木の性質を熟知し、
その特性を最大限に引き出す腕の巧い大工もめっきり減ってしまった。
効率や能率を追及すると、何か大切な物が置き去りになってしまうような気がする。

*              *

円生師匠が元気なら、最近のお笑い芸人をどう思うだろうか。

「そりゃぁ、松の木は曲がって面白いでしょがね、曲がり過ぎは頂けません」
「あんな乱暴な芸はありませんよ・・ 弱りましたねどうも」

時代も人間も、曲がり過ぎが目立っているようだ。


3/長月/2010年      山田 雄正